3分でわかる西洋美術史の流れ

西洋美術の流れをざっくりと紹介します。

かなり短縮形ですが、おおまかな流れはつかめるはず…

1.ゴシック美術(12~14世紀頃)

中世の暗黒時代を抜け出し、ようやく繁栄を迎えた時代。
ゴシック美術以前にも西洋美術はありますが「建築」がメインでした。
そんな中、ジョット・ディ・ボンドーネの登場で絵画が飛躍的に発展しました。

荘厳の聖母(オニサンティの聖母)(Madonna in Maesta (Ognissanti Madonna)) 1306-10年頃
ジョット・ディ・ボンドーネ Giotto di Bondone
325×204cm | テンペラ・板 | ウフィツィ美術館(フィレンツェ)

2.ルネサンス美術(14~16世紀頃)

イタリアを中心盛んになり、やがてヨーロッパの北方にも広がっていきました。
ルネサンスは「再生」という意味で、簡単に言うと「古代のギリシアやローマ文化の復興」です。
豊かな人間性を表現しようとしました。
ルネサンスは「初期ルネサンス」、「盛期ルネサンス」、「後期ルネサンス(マニエリスム)」の3つに分けられます。

2-1.初期ルネサンス

遠近法などを活用し、人間や空間を立体的に表現することが可能になりました。
この時代の絵画は、教会からの注文が中心でキリスト教に関する作品が大部分でしたが、この頃からメディチ家のようなパトロン(後援者)が出現したため、キリスト教以外の作品も増えていきました。

ビーナスの誕生 (Nascita di Venere)1485年頃
サンドロ・ボッティチェリ Sandro Botticelli
172×278cm | テンペラ・画布 | ウフィツィ美術館(フィレンツェ)



2-2.盛期ルネサンス

レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロの三大巨匠が活躍した時代を指します。
数十年ほどしかないのですが、物凄い才能を持った芸術家が多数現れた時代でした。
そのため美術史においては、非常に重要な時代であると言えます。

最後の晩餐 Ultima Cena (Cenacolo)
レオナルド・ダ・ヴィンチ Leonardo da Vinci 
460×880cm | 油彩・テンペラ | サンタ・マリア・デレ・グラツィエ聖堂修道院食堂(ミラノ)



2-3.後期ルネサンス(マニエリスム)

絵画の対象が引き伸ばされ、さらに捻じ曲げられているような奇抜な表現が特徴です。
このような表現が行われた理由としては、盛期ルネサンスの巨匠の様式(マニエラ)を極端に模倣したとする説と、精神的な表現を試みたとする説の2つがあります。
また、パトロンが教会から宮廷など位の高い人に変わったこともあり、知的で難解な作品も多く登場しました。

ラオコーン(Laocoonte) 1610-1614年頃
エル・グレコ El Greco
142×193cm | 油彩 | ワシントン・ナショナル・ギャラリー

3.バロック美術(17~18世紀初期)

ルネサンス美術と同じくイタリアで生まれます。
カトリックとプロテスタントの宗教対立が芸術発展に大きな影響を与えています。宗教改革で生まれたプロテスタントがカトリックよりも力を持つようになったため、カトリックが信者が見てわかる聖書として使いました。
光と影のコントラストなど、鑑賞者に強烈なインパクトを与えるような表現が特徴です。

夜警(フランス・バニング・コック隊長の市警団) 1642年
(The Night Watch (The Militia Company of Captain Frans Banning Cocq))
レンブラント・ファン・レイン Rembrandt Harmensz, van Rijn
363×437cm | 油彩・画布 | アムステルダム国立美術館

4.ロココ美術(18世紀)

ルネサンスからバロックまでイタリアが美術の中心地だったのですが、戦争などで力が衰えフランスが中心地となります。
当時のフランスで古典様式が重視されていたこと、そしてルイ14世の堅苦しい政治が行われていた反動から「もっと自由に!楽しく!」という価値観が生まれました。
明るく輝く色彩、渦巻く構図、パステルの色調の優しさが、ロココ美術の大きな特徴です。

ぶらんこの絶好のチャンス(ブランコ)(Hasards heureux de l'escarpolette) 1767年頃
ジャン・オノレ・フラゴナール Jean Honoré Fragonard
83×65cm | 油彩・画布 | ウォーレス・コレクション(ロンドン)

5.新古典主義(18世紀中頃~19世紀初期)

きっかけは、ローマでの考古学的発見や古代都市ポンペイなどの発掘によって古代芸術の知識が上がり、古代ギリシヤやローマの壮大で気高い芸術に感化されたことによります。
古代ギリシアやローマを題材とする作品が流行し、構図も盛期ルネサンスのラファエロのような古典が意識されています。

ホラティウス兄弟の誓い(Serment des Horaces) 1784年
ジャック=ルイ・ダヴィッド Jacques-Louis David
330×425cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ)

6.ロマン主義(19世紀初頃~中期)

ロマン主義とは、中世の騎士道精神や華やかな物語に由来する「ロマンス」という言葉からきています。
新古典主義に反発し、個性や想像・感情といった感性を大切にした作品が多いのが特徴です。
ダンテやシェークスピアなどの文学のテーマ、キリスト教の伝説、アーサー王伝説のような中世の騎士道物語などを題材にしました。また実際に起きた事件や時事問題を歴史画のように描く作品も出てきました。

民衆を率いる自由の女神-1830年7月28日(La Liberté guidant le peuple - Le 28 juillet 1830)
ウジェーヌ・ドラクロワ Fedinand Victor Eugene Delacroix
1830年 | 259×325cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ)

7.写実主義(レアリスム)(19世紀中頃)

ロマン主義では実際の出来事を作品にしたりもしましたが、それでも非日常に近いものでした。
過去の巨匠から技術を学び洗練された様式アカデミーの慣習に対立し、またロマン主義の個々の判断による自然の把握や感受性に訴えるところにも反発しました。理想化して描くのではなく、見たものをそのまま描こうとしました。
貧困層の労働者や農民など庶民の姿を芸術のテーマに取り上げたことにより、大きなスキャンダルを巻き起こしました。しかしこの大きな変化が「近代化芸術の流れ」となりました。

落穂拾い (The Gleaners)1857年
ジャン=フランソワ・ミレー Jean-Francois Millet
83.5×111cm | 油彩・画布 | オルセー美術館(パリ)

8.印象派(19世紀中頃~後期)

写実主義から大きな影響を受け、ルネサンスから続く芸術の伝統に終わりをもたらした新しいスタイルですが、当時は酷評され大きな議論を巻き起こしました。
芸術家に大きなきっかけを与えたものに、日本の浮世絵と写真があります。
浮世絵の大胆な構図、明るい色使い、立体的や遠近法にこだわらない作風が画家に画法の見直しをさせるきっかけとなりました。また写真から人や動物の動きを知ることができるようになり、絵画の概念を見直すきっかけとなったと考えられます。題材も日常の生活や娯楽、仕事風景などで、大切なのは「どのように描くか」、「光がどのように輝いて変化するのか」ということに大きな関心を持ちました。

印象 -日の出- (Impression, soleil levant) 1872年
クロード・モネ Claude Monet
48×63cm | 油彩・画布 | マルモッタン美術館(パリ)

9.新印象主義(19世紀後期~20世紀初期)

印象主義の周辺からスタートしているが、表面的な表現に力を注ぐ作品に反発をし、革新的な色彩、筆づかい、題材を選び感情や思想を表現しようとしました。
個性や精神面を強く表現するというスタイルは美術界にも大きな影響を与えました。
画家の作風も多様化し、題材もヌードや 風景、肖像、静物、宗教的など様々でした。

台所のテーブル(籠のある静物)Table de cuisine (Nature morte au panier)) 1888-1890年頃
ポール・セザンヌ Paul Cézanne
65×81cm | 油彩・画布 | オルセー美術館(パリ)

10.象徴主義(19世紀)

印象派と並行して発達しました。
18世紀中頃から科学技術が発展し生活が豊かになるが、一部の芸術家たちは将来に対して不安を抱え反発するようになります。そのことから、不安や生死の問題など、形の無いものを表現しようとし、神話や文学などを象徴的に描きました。

スラヴ叙事詩-原故郷のスラヴ民族(The Slave in their Original Homeland)1911年
アルフォンス・ミュシャ Alfonse Mucha
610×810cm | 油彩・テンペラ・画布 | モラフスキー・クロムロフ城

11.20世紀美術、そして現代へ

新印象主義・ポスト印象主義から強い影響を受けた画家たちは、新たな様式や手法の絵画に取組み始めました。
美術の中心地もフランスのパリからアメリカのニューヨークへと変わりました。
絵画や彫刻といった伝統的な表現にとらわれない自由で個性的な作品が次々と誕生しました。
美術の歴史は、より自由で新しい世界を求め続けています。

赤と黄と青のコンポジション(Composition with Red, Blue and Yellow) 1930年
ピエト・モンドリアン Piet Mondrian
51×51cm | 油彩・カンヴァス | 個人蔵